8. 世界遺産ウジュン・クロンとクラカタウ火山
ウジュン・クロン(Ujung Kulon)はジャワ島西端に位置していて、オランダ時代から保護区に指定され、その自然は手厚く保全されてきた。ジャワサイ、バンテン(野牛)などの貴重な野生動物の宝庫であったが、インドネシア独立後違法入植などでその生態系は危機に陥っていた。そこで、1980年代に国立公園に指定され、1991年世界遺産に登録された。。ジャワ島西端とスマトラ島南端にあるクラカタウ火山もその中に含まれている。登録理由は、素晴らしい景観とそこに広がる熱帯雨林の生態系の多様性である。 ウジュン・クロン国立公園内の違法入植者は21世紀に入ってから、強制退去されたが、境界ぎりぎりまで村がある。村人に「ジャワサイを見たことがあるか」と聞くと、「人生70年生きてきて、わずか2回しか見たことがない」そうだ。それほど、ジャワサイは減少し、絶滅危惧種に指定されている。 ウジュン・クロンの生態系を考える場合、クラカタウ火山の影響は無視できない。有史以前、海抜1800メート余りの古クラカタウ山があったが、紀元6世紀の大爆発で3つの島に分かれ、大部分は水没した。その状態が1883年まで続いたが、その年の5月、突然3つの島が火を噴き、最後に大半の海底に沈んだ。残ったのは、ラカタ島の3分の1余りとなった。その後1927年、海底火山が噴火を開始し、21世紀になると海抜600メートルを越す島に成長した。これが、アナック・クラカタウである。アナックとはインドネシア語で子供の意味。私が訪れた2017年はその姿が見られる最後の年になった。2018年そのアナック・クラカタウは再び爆発し、大規模な山体崩壊を起こして、山容が一変した。 ウジュン・クロンとクラカタウとの関係は、屋久島と鬼界カルデラとの関係に似ている。鬼界カルデラは世界遺産ではないが、ジオパークに指定されている(クラカタウも同じである)。
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