屋久島での活動

1.「屋久島憲法100周年記念シンポジウム」準備委員会

1921年鹿児島大林区によって発布された「屋久島国有林経営の大綱」(屋久島憲法)は屋久島の近代と現代を分ける分水嶺となったが、その中心は屋久島の森に関わる入会権の問題であった。そこが、インドネシアの土地問題と深く通じる共通項である。

第1回準備委員会(2020年8月)

第2回準備員会(2020年10月)

第3回準備委員会(2020年11月)

第4回準備委員会(2021年2月)

第5回準備委員会(2021年3月)

2.「屋久島憲法100周年記念シンポジウム」

2021年11月6(土)~7日(日)
屋久島総合センター(安房)
*コロナ対策のためハイブリッド型リモート会議方式を採用.
*シンポジウムの写真は屋久島町役場撮影.

「町報やくしま」令和3年9月号4頁

3.「屋久島の海の森:藻場のこれまでとこれから」

講師:寺田竜太氏(鹿児島大学大学院連合農学研究科教授、研究科長)
期日:2023年11月18日(土)午後2時~4時
会場:屋久島町役場議会棟会議室
主催:屋久島持続的資源利用研究会(代表中島成久法政大学名誉教授)
後援:屋久島町・屋久島環境文化財団

山に森があるように,海の中にも森があります。海の中の森は「藻場」とも呼ばれており,海藻などが繁茂する場となっています。藻場は,さまざまな魚介類の暮らす場所や産卵場所であることや,海藻類が光を浴びて酸素を出すことから,沿岸域の生態系を支える存在として重要です。屋久島の沿岸には,岩場を中心に藻場が随所に見られます。しかし,近年,藻場が衰退したり,熱帯性種に置き換わったりするなど,問題となっています。今回は,屋久島の藻場の状況と問題点,今後の変化についてわかりやすくお話します。

4.屋久島志戸子集落の郷土料理「ブダイのキモイ」試食会開催の意義

  1. ブダイについて

    海藻は海の生態系の基礎であり、海藻の存在なしには海の生物は生存できない。近年、日本の海域から海藻(藻場)が消えてきて、漁業だけではなく、二酸化炭素の吸収源としての藻場の消失は、地球環境問題にとっても深刻な問題となってきている。藻食魚としている知られているブダイはもともと熱帯・亜熱帯の海域に生息している魚であるが、温暖化による海水温の上昇とともに、ブダイの生息域が北上している。さらに冬の海水温が上昇したことにより、越冬できるようになってから、西日本の海域全体に生息するようになってきて、ブダイの食圧も藻場が消失する大きな原因となってきた。屋久島においても藻場が消失しているが、その原因の一つとして海水温の上昇によってブダイが増えてきたことである。だが、ブダイの内臓は悪臭がするため食の対象とみなされることは稀であり、このこともブダイが繁殖してきた一つの要因である。

  2. ブダイを食べることの意義

    沖縄ではブダイを食べることは普通の食習慣であり、ブダイを食料源として恒常的に利用することは可能である。特に温暖化による藻場の消失問題に直面している日本近海の海の生態系の保全のためには、ブダイを恒常的に食することは重要なことである。屋久島の志戸子集落では「ブダイのキモイ」と呼ばれるブダイ料理が存在していたが、食習慣の変化とともに若い世代ではほとんど知られていない。こうした理由により、「ブダイのキモイ」料理の試食会を開催することは、郷土料理の伝承を確かなものにするというためだけではなく、ブダイを普通の食材として広く利用する食習慣が普及することによってブダイの食圧が減り、屋久島における藻場の維持・復活につながる。それはまた地球環境問題の解決にも寄与するだろう。

  3. ブダイはモハミ

    種子屋久では、ブダイのことを「モハミ」と呼んでいる。モハミとは「藻を食む」という意味で、文字通り藻食魚の特性を示している。宮之浦でも、モハミはスヌタで食べる刺身や唐揚げとして食べていた。しかし、なぜかその食習慣は廃れてしまい、モハミという言葉もあまり使われなくなってきた。こういう状況下では、昔の食習慣を復活させ、その現代的意義を強調することは重要である。

  4. この試食会は、中島が受給している科研費基盤研究C「屋久島の海のコモンズの現状とその資源の持続的利用への課題」(2023~2026:課題番号23K01019)を原資として、「屋久島持続的資源利用研究会」の第2回目の活動として行われた。